前のブログにもしたためましたが、演劇をよく見にゆきます。
演劇の魅力は「そこにあるリアル」だと考えてます。
過去・現在を表す時間や、
それが起こりうる空間や空想の世界さえも移動しながら、
目の前の同じひとつの場所で演じられているリアル。
貧相な舞台装置しか組み上げられずとも、
その発想や話が面白ければ、
演じ手から受ける、
受け手の想像力も追いつき、
一緒になってひとつのストーリーを紡ぎだします。
最近もいくつか見てきましたので、その感想などをまとめてみます。
■「奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話」@三軒茶屋シアタートラム
この公演は、劇団イキウメの感触がとてもよかったので、
主宰で、今注目の演出家「前川知大さん」の他作品を見に行こうと出かけました。
題材は、小泉八雲の「怪談」です。
小泉八雲に関しては、全くの知識不足ではありましたが、
「現代でいう稲川淳二さん」ぐらいだろうと。
昔から言い伝えのある怪談を、
どのように現代劇として仕上げてくれるかを楽しみに行きました。
設定は、古びた旅館に男同士で立ち寄ってみたところ、
そこに伝えられている「怪談」を耳にするところから始まります。
怪談の内容そのものを聞きながら、
舞台上では、自然にそれを再現してゆく形で推移。
この「トリップ感」を上手く演出してくれる演劇は心地よいです。
聞いた話によると怪談は、
「ヒヤヒヤさせる事で、人間の本来持つ生死の防衛本能を呼び起こすためのもの」
だそうで。
たしかに古典をベースにした演劇を見ると、教訓を突きつけられるように感じます。
「生きている事のありがたみ」「他人とのつながり」「身分の垣根を越えた愛憎」などなど。
今回も同じく、その印象でした。
現代における制約の無さが、過去から続く解放の連続性の中にあるのなら、
そのうち何もしないことが一番の幸せと感じてしまうのかなと。
映画マトリックスにあったような、培養液に漬けられた人間もない話じゃないかもです。w
ちなみに目的であった「前川さんの演出力」に関しては、
設定の作り方が上手だと感じました。
個人的には、現実と空想である会談の行き来をもう少し入れてほしかったです。
そうです、「トリップ感」を楽しみたかったのです。
(公式サイト)
http://setagaya-pt.jp/theater_info/2009/07/post_153.html
■「狭き門より入れ」@パルコ劇場
これも、前出の「前川さんの演出」をチェック、w
佐々木蔵之介さんや市川亀治郎さんといったビッグキャストと、
どういった化学反応を起こしてくれるか、楽しみに見てきました。
話の内容は、とあるコンビニを舞台にした、
これまた現代と未来を行き来するものでした。
この場合の現代は、「このままいけば崩壊する社会」として描かれています。
また、そのコンビニは現代と未来をつなぐ中継個所であるというもの。
主役であるエリートサラリーマン佐々木さんと、
コンビニ店長が兄弟という設定が、
起伏を生む要素になっており、
現代と未来の行き来と共に振り幅の大きい物語でした。
極力未来に行かなくては、このままでは現代が崩壊してしまう事を、
兄が弟に必死に伝えるシーンなど、
上手くその振り幅を混ぜ込み秀逸でした。
設定が現代に置き換えられている点や、
現代から無事に未来に行く際、
現代側に門を閉じる門番となる人柱が必要になる点、
門番になる人間には「利他の精神」が必要になるなど。
かなり細かく設定されていて、あまり悩むことなく見れました。
この辺りは、設定の構成が上手だなと感じました。
反面、作りこみすぎた設定が破たんしてるのでは??と、
感じる場面もあり、
「上質は細部に宿る」という言葉は、
こういう事をさすのだなとも。
しかし、佐々木さんの熱演には心動かされました。
役になりきり、放熱量は半端なく、アツイ男を再認識しました。
(公式サイト)
http://www.parco-play.com/web/play/semaki/index.html
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「現実ではありえない設定をいかにリアルに共感させてゆくか」
きっと前川さんの真骨頂はココにある気がします。
「関数ドミノ」で感じた、あの巻きこまれ方を思うと、
今回の2本は、ややそのリアルさに乏しかったように感じました。
しかし、設定の作り方や、場面転換のアクセントには、感服です。
自分は、これを仕事に活かせたらと。
今回は設定・演出に目を向けてみました。
ご興味もたれた方は、是非劇場に足を運んで実際に体験してみてください。
面白いですよ、演劇。