「演劇のススメ」最終回です。
1回目は「新進気鋭」の劇作家演出家をご紹介しました。
2回目は個人名を劇団名につけ、
プロデュース公演を行う「女性劇作家演出家」と、
一人だけでソロアクトをしてしまう
「ベテラン男性劇作家演出家and役者さん」をご紹介しました。
今回は「劇団」の紹介です。
お気づきのとおり、劇作家演出家が好きなので、
その劇団の主宰である「ケラリーノ・サンドロビッチ」も加えつつ、
極力「ナイロン100℃(以下、ナイロン)」という劇団をご紹介したいと思います。
ナイロンとの出会いは「ハルディンホテル」でした。
あるホテルに宿泊したお客さんが、10年後の同じ日に再び宿泊する。
そこで、繰り広げられるドタバタ喜劇。
まず、設定に夢があるところがナイスです。
無理矢理な設定を、どうにかこじつけてゆくというよりは、
こういう設定があると、どんな話が展開されるのだろうと、
淡い期待を持てる設定です。
また、看板役者の「大倉くん」が秀逸です。
どんなシリアスな場も一気にシュールな笑いに持って行ける爆発力。
オススメです。
次は、思い出に残っている戯曲「わが闇」。
ある作家と彼の3姉妹をとりまく人間模様を描いたもの。
「笑い」は「緊張と弛緩」によって生まれるものだと言われています。
すご~~くシリアスなシーンが続いた後に、
急に「なんちゃって!!」と大きなポーズで言われたら、
「おいおい」と言いながら笑っちゃいますよね。
この戯曲は、その「緊張と弛緩」が絶妙でした。
作家の孤独を真剣にリアルに問いかける「緊張」部分。
そんな作家の緊張を3姉妹と大倉くんの大きな演技で崩す「弛緩」部分。
あまりに絶妙過ぎて、泣けるのと笑えるのが一気にやってきたのを思い出します。
この頃、劇団主宰のケラリーノ・サンドロビッチが一番ノッていたのでは、と。
後に緒川たまきさんとのご結婚を発表されます。
「男性の好きなスポーツ」という戯曲では、
「男性の好きなスポーツ=SEXそのもの」を題材に、
4組ほどのカップルの行き来を描いたものでした。
劇中劇で行われた「SEX講座」なるものが秀逸で、
徹底的におふざけするのも、この劇団のふり幅の広い所です。
周りにもいますよね、カラッとした下ネタを気持ちよく面白く話す人。
タイムスリップをコミカルに描いた「ナイス・エイジ」は、
そのグッズが面白かったです。
男なら幼少期に誰しもがハマったことのある「プラモデル」の箱をモチーフに、
取扱説明書=パンフレットで構成されてました。
遊び心が溢れていて、なおかつ素直に「ヤラレタナ」と思える所もオススメです。
最後は、一番最近の戯曲。「世田谷カフカ」
カフカの数々の小説をモチーフに、
場所の設定を世田谷に持ってきたものでした。
これまでにないぐらい、舞台に俳優さんが溢れ、そのエネルギーを感じました。
舞台袖にも積極的に役者さんがあらわれ、
今後のナイロンの展開がよりダイナミックになるのでは、と。
そんな予感を感じさせる戯曲でした。
「設定の作り方」
「笑いの作り方(緊張と弛緩)」
「役者さんの演技(幅広いキャラクター)」
「遊びきれる大胆さ」
「役者の多さが醸し出す迫力」
など、演劇を楽しむ要素がたくさんちりばめられてると思います。
かなりひいき目な「演劇のススメ」になりましたが、
「人と人が、自分の目の前で、物語を紡ぎだす興奮」を、
是非楽しんでもらえると、嬉しいです。
最後に、引用を。
小説は活字が残る。
映画はフィルムが残る。
演劇は伝説が残る。
伝えるためだけに、これだけの言葉を要してしまったことを、お許しあれ。